妊娠後期に発症する胎児リンパ管奇形は,主として拡張した嚢胞状のリンパ管から構成される良性の血管奇形とされ,ほぼすべての部位に発生する.妊娠後期に発症した出血を伴う巨大腋窩リンパ管奇形の一例を経験したので報告する.症例は29歳で妊娠歴は0経妊0経産であった.他院でクロミフェン内服により妊娠し28週までは異常なく経過していた.30週に胎児表面に40 mmの腫瘤を認め,32週には胸部から発生する58×48 mmの腫瘤を認めた.34週で腫瘤は106×99 mmに腫大し,35週1日に当院へ紹介された.超音波検査で胎児右腋窩から側腹部にかけて11 cmの多房性腫瘤を認めた.その一部に周囲に血流を伴い内部に出血を疑わせる直径 6 cmの嚢腫を認めた.また,胎児右胸水を認め同日入院した.胎児MRIで,右胸水を伴う右胸・側壁の巨大腫瘤を認め,多房性嚢腫で一部に内部に出血を伴う嚢腫を認めた.腫瘤の大きさ・児の大きさを考慮し,36週2日に選択的帝王切開で3,930 gの男児を娩出した.出生後のCT検査で後腹膜におよぶ腫瘤を認め,巨大リンパ管奇形が疑われたが,腫瘍内部に血流を認め,リンパ管奇形と他の血管奇形が混在した混合型血管奇形とも考えられた.巨大腋窩リンパ管奇形を認める児の分娩に際しては分娩時の嚢胞内出血や産道通過障害を考慮して適切な分娩時期や分娩方法を検討する必要がある.
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