不妊検査中に帝切後の子宮筋層の菲薄化を認める例を時に経験する.今回我々は帝切既往がある不妊症に対し,子宮鏡を利用し開腹下に筋層菲薄部を正確に同定,形成し妊娠した2例を経験し,うち1例は生児を得たので報告する.
<症例1>30歳.1経妊1経産.3年前前置胎盤での警告出血のため31週で帝王切開が施行された.1年間の不妊にて当科初診後,経腟超音波,MRIにて帝王切開における筋層切開部と思われる筋層の菲薄化(4 mm)を認めた.子宮卵管造影検査でも帝王切開部に一致する造影剤のpoolingを認めた.子宮鏡では血管増生を伴った突出部を認め,諸検査所見と一致した.開腹下で筋層菲薄部は子宮鏡の透過光が明らかに強く透過光をガイドに筋層を正確に切開し形成した.形成後透過光は減弱し筋層が厚くなったことが示唆された.術後筋層は9.8 mmと厚くなり,8か月後タイミング指導により妊娠し,妊娠経過も順調で38週で帝王切開を行い生児を得た.
<症例2>40歳.3経妊1経産.6年前胎児機能不全にて40週で帝王切開が施行された.5年間の不妊にて当科初診後,経腟超音波検査では子宮筋層の菲薄化を認めなかった.タイミング指導により妊娠するも5週にて流産し,子宮内容除去術を施行した.その後超音波検査,MRIで筋層の菲薄化を認め子宮鏡検査後,症例1と同様に筋層を形成した.術後HMG療法にて妊娠するも7週にて流産となった.
子宮鏡の透過光を利用した形成術は子宮筋層の菲薄化部を正確に同定できるため,形成をより正しい層で行うことが可能であり,有用な方法と考えられた.
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