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第52巻 第4号

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症例報告
たこつぼ型心筋症により心不全を発症した卵巣腫瘍捻転術後の一例
伊集院 昌郁1), 段 泰行2), 浅野 涼子1), 飯沼 綾子1), 齊藤 真1), 北山 玲子1), 須郷 慶信1), 香川 愛子1), 長瀬 寛美1), 飛鳥井 邦雄1)
1)横浜南共済病院産婦人科
2)湘南藤沢徳洲会病院産婦人科
関東連合産科婦人科学会誌, 52(4):585-593, 2015

 卵巣嚢腫の茎捻転に対して緊急手術を行い,術後たこつぼ型心筋症を発症した症例を経験したので報告する.
 症例は88歳.突然の下腹部痛を主訴に近医内科を受診し,経腹超音波で下腹部の巨大な嚢腫を認めたため当院紹介受診となった.卵巣嚢腫茎捻転を疑い,緊急開腹手術を行った.18 cm大の右卵巣腫瘍が反時計回りに720°捻転しており,右付属器摘出術を施行した.病理組織診断は成人型顆粒膜細胞腫であった.術後1日目に呼吸困難が出現し,酸素化不良となった.胸部X線で肺うっ血があり,心電図異常,心筋逸脱酵素上昇も認めたため心原性の呼吸不全を疑った.心臓カテーテル検査の結果,冠動脈に有意狭窄は認めなかったが,左室造影でEjection Fraction 29%,心尖部の壁運動低下を認め,たこつぼ型心筋症による心不全および呼吸不全と診断された.酸素吸入,human atrial natriuretic peptide(hANP),ヘパリンによる治療と水分コントロールを行ったところ心機能,症状は改善し,術後7日目にhANP,ヘパリンを終了,14日目には酸素吸入を終了した.
 たこつぼ型心筋症は様々なストレスを契機として発症すると考えられており,産婦人科の周術期においても留意する必要がある.

Key words:takotsubo cardiomyopathy, heart failure, torsion of ovarian pedicle
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