卵巣成熟嚢胞性奇形腫は約1~2%の頻度で悪性転化を来すとされている.組織型としては約75~80%が扁平上皮癌であり,腺癌への悪性転化は約6.3~7%と非常に稀である.今回我々は卵巣成熟嚢胞性奇形腫が腺癌へ悪性転化した一例を経験したので文献的考察を加えて報告する.症例は66歳女性,4回経妊2回経産.下腹部膨満感を主訴に来院した.MRIで9 cm大の辺縁平滑な嚢胞壁を有する右卵巣腫瘍が認められ,内容液はT1強調画像でlow,T2強調画像でhighであった.壁内には脂肪抑制される4 cm大の充実成分と,造影効果のない1 cm大の壁在結節が認められた.卵巣成熟嚢胞性奇形腫が疑われ,腹式両側付属器切除術が施行された.右卵巣腫瘍内には黄色の脂肪と茶褐色で粘性の液体が含まれ,乳頭状に隆起する1 cm大の壁在結節が2か所に認められた.腫瘍壁には病理組織学的に甲状腺組織,軟骨組織が含まれ,壁在結節に一致して腺癌の組織が認められたことから,成熟嚢胞性奇形腫の腺癌への悪性転化が疑われた.卵巣癌根治術(単純子宮全摘出術+骨盤・傍大動脈リンパ節郭清+大網部分切除術)が施行され,進行期分類は,卵巣癌(腺癌)stage Ia pT1aN0M0であった.術後補助化学療法は実施せず,術後8か月経過したが再発は認められていない.
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