腹膜原発悪性中皮腫は早期診断が困難で,確立した治療法がなく予後不良である.上皮型悪性中皮腫は多彩な上皮様構造を呈し腺癌と類似するため,鑑別には免疫組織学的検査が必要である.今回,腫瘍減量手術後の免疫組織学的検査結果前に急速な転帰をとった上皮型腹膜原発悪性中皮腫の症例を経験した.症例:67歳.58歳時に良性卵巣腫瘍で両側付属器切除術をした.約1か月前より腹部膨満感を自覚し,著明な腹水貯留を認めた.腹水細胞診class V(漿液性腺癌の疑い),CA125高値,CT検査にて腹膜肥厚と多発腹膜播種を認めた.腹膜癌による癌性腹膜炎を疑い,腹式単純子宮全摘+大網部分切除+腫瘍減量術を施行した.黄褐色の大量腹水と多発腹膜播種巣を認めた.HE染色による病理診断は腹膜癌(低異型度漿液性腺癌)であった.術後15日目より化学療法(dose-dense TC療法)を開始した.化学療法継続の予定であったが,腹水再貯留により循環動態が急速に悪化し術後28日目に永眠された.死亡後,遺族の同意が得られず病理解剖は行えなかった.その後calretinin陽性により,上皮型腹膜原発悪性中皮腫と診断した.腹膜原発悪性中皮腫は腹水貯留,腹膜の肥厚および多発性の腹膜結節性病変が特徴的とされ,癌性腹膜炎との鑑別が困難である.鑑別には病巣の病理免疫組織学的検査が必要である.
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