子宮体癌は一部の特殊組織型を除いて子宮内膜から発生し筋層へ浸潤すると考えられているため,筋層浸潤を認めないものはより早期と考えられている.しかし,ごく稀に筋層浸潤がなくても,腹水細胞診で悪性細胞を認めることがある.今回我々は筋層浸潤はないが腹水細胞診陽性で,大網転移を認めた子宮体癌症例を経験したので,大網切除の診断的意義も含め文献的考察を加え報告する.症例は62歳2経産婦,不正出血と腹痛を主訴に前医を受診し子宮内膜細胞診陽性で当院へ紹介された.子宮内膜肥厚を認めなかったが,内膜組織診では類内膜腺癌(G1)と診断された.画像検査でも子宮筋腫のみで筋層浸潤やリンパ節転移を認めず,早期子宮体癌の術前診断で開腹手術を施行した.術後病理診断は子宮体部類内膜腺癌(G1)で筋層浸潤やリンパ節転移を認めなかったが,腹水細胞診陽性で大網転移を認めた.当院で過去5年間に,子宮体癌の術前診断で大網切除を行った103例を対象とし,(1)組織型(2)筋層浸潤の程度(3)腹水細胞診の3項目が各々大網転移の関連因子かどうかを検討すると,子宮漿膜までの腫瘍浸潤と腹水細胞診陽性が大網転移と統計学的有意な相関を認めた.他の文献では,術前I期相当の大網転移率は3~8%との報告であった.早期子宮体癌でも,わずかではあるが大網転移が起こりうることを念頭に置き,肉眼や触診で異常を認めずとも積極的な組織学的検索が必要であると考えられる.
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