原発不明がんの精査で子宮内膜細胞診所見より術前に原発性卵管癌を強く疑い管理した1例を報告する.症例は73歳女性,2回経妊2回経産.左下腿の浮腫を主訴に当院外科を受診した.造影CTで傍大動脈・左外腸骨・左鼠径領域に1.5 cmまでのリンパ節腫大を認め,他に明らかな腫瘍性病変は指摘されなかった.原発不明がんの診断・精査目的に当科に併診された.婦人科的診察では,出血や帯下の異常を認めず,3 cm大の筋腫のほかに,内膜肥厚,腫瘍性病変や腹水を認めなかった.血液検査ではCA125のみ259.1 U/mlと高値であった.子宮腟部細胞診はNILMで,子宮内膜擦過細胞診ではきれいな背景にN/C比の増大した核小体明瞭な異型細胞の集塊を認めた.子宮内膜組織診では異型細胞を認めなかった.卵管癌を念頭に,腹式単純子宮全摘出術,両側付属器摘出術,大網切除術,骨盤リンパ節生検を施行し,術後病理組織診断で左卵管癌IIIc期(漿液性乳頭状腺癌pT3cN1M0)と診断した.明らかな婦人科由来の悪性腫瘍所見が画像や血液検査から同定できず,特に腹水貯留が認められない場合には,子宮内膜細胞診は診断と治療開始の端緒として有用な検査になり得ると考えた.
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