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第52巻 第4号

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症例報告
Massive Ovarian Edemaと術前診断したKrukenberg腫瘍の一例
井田 耕一, 吉川 美登利, 森田 政義, 村中 愛, 山本 かおり, 本藤 徹
長野赤十字病院産婦人科
関東連合産科婦人科学会誌, 52(4):699-704, 2015

 Massive Ovarian Edema(MOE)は間質内浮腫のため非腫瘍性に卵巣が腫大する病態である.今回我々は急性腹症の原因としてMOEを疑い開腹手術を施行したが,腹膜播種の所見から胃癌の再発と診断した若年女性の症例を経験した.
 31歳,2回経妊2回経産.8年前に胃癌で幽門側胃切除術を施行され,術後補助化学療法により再発なく経過していた.2か月前に右水腎症を伴う急性腎盂腎炎のため内科に入院し,右尿管ステント挿入後に軽快した.退院後間もなく腹痛を訴えイレウスの診断で内科に再入院した.下部消化管内視鏡でRb~RS部に狭窄を認め一部生検されたが病理では再発と断定できなかった.退院後しばらく症状は安定していたが,今回,強い腹痛のため内科に再入院した.右下腹部に圧痛を伴う硬い腫瘤を触れ,MRIでMOEを疑われ当科に転科し緊急開腹手術を施行した.右付属器は手拳大,浮腫状でMOE様だった.骨盤腹膜に散在する数mmの白色病変を認めたため腹膜播種を疑い一部を摘出した.迅速診断で胃の低分化型腺癌の播種と診断された.緊急手術のため右付属器摘出のみで終了した.病理診断は右卵巣への胃癌転移であった.MOEの病因は大半が茎捻転とされ,若年者であれば卵巣を温存することもある.しかし本例のように癌転移によりMOE様所見を呈する症例もある.可能な限りの組織検索が必要と考えられる.

Key words:Massive Ovarian Edema, Gastric Cancer, Krukenberg tumor
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