書誌情報

第52巻 第4号

  • 書誌情報
  • 全文PDF

症例報告
小児期の鼠径ヘルニア手術が原因と推定される妊婦の子宮円靱帯の短縮と卵巣捻転:34週人工早産例
山中 桜1), 近藤 沙織2), 小口 治2), 仲井 育子2), 牧内 玲子2), 平田 知之2)
1)信州大学産科婦人科学教室
2)JA長野厚生連佐久総合病院佐久医療センター
関東連合産科婦人科学会誌, 52(4):733-737, 2015

 鼠径ヘルニアは小児外科では主要な疾患であるが,通常その既往は重視されていない.今回,我々は小児期に受けた鼠径ヘルニア手術が原因と推定される強度の疼痛により,緊急帝王切開を余儀なくされた症例を経験した.症例は29歳,0回経妊,1歳の時に単純高位結紮術(以下,Potts法)で卵巣の滑脱を伴う右鼠径ヘルニア(以下,卵巣滑脱型ヘルニア)の手術を受けた.妊娠32週2日に切迫早産で入院し,しばらく状態は落ち着いていたが,妊娠33週6日に右下腹部から鼠径部の痛みが突然出現した.母体のvital signは異常なく,胎児の状態も良好であり,硬膜外麻酔などを使用し,妊娠継続の方針とした.しかし,妊娠34週3日に発熱と血液検査で炎症所見を認め,子宮収縮が頻回となったため,試験開腹および緊急帝王切開術を施行した.術中所見は右子宮円靱帯が約2 cmに短縮し,同部位に捻転した右卵巣と大網が癒着していた.これらの変化は,鼠径ヘルニア手術の合併症と考えられた.
 考察から,手術を受けた年齢が若年なほど卵巣滑脱型になりやすく,さらにPotts法で手術を行うことで子宮円靱帯の短縮や付属器の障害を起こしうることがわかった.今回の症例では,妊娠中の子宮増大や子宮収縮により,捻転・癒着していた卵巣ヘの血流障害が生じ,突然疼痛が惹起されたと推定した.鼠径ヘルニア手術の長期的な合併症は明らかでないが,不妊や腹腔内の癒着による腹痛の原因となっている可能性がある.

Key words:emergency cesarean section, round ligament, inguinal hernia, postoperative complication
他地区の会員で全文PDFをご覧になりたい方は、学会事務局へお問合せください。

一般社団法人
関東連合産科婦人科学会

〒102-0083
東京都千代田区麹町4-7
麹町パークサイドビル402
(株)MAコンベンションコンサルティング内
E-mail:kantorengo@jsog-k.jp

一般社団法人関東連合産科婦人科学会

ページの先頭へ

Copyright © 一般社団法人関東連合産科婦人科学会