原発性の腟悪性腫瘍は全女性器癌の中でも少なく,組織型のほとんどは扁平上皮癌である.我々は不正性器出血を契機に発見され,腟原発性明細胞腺癌と判明した極めて稀な症例を経験したので報告する.症例は69歳,2経妊1経産.不正性器出血を認めたが,近医婦人科で異常を指摘されなかった.近医内科で腹部超音波断層検査を施行し,膀胱内腫瘤を認めたため,当院泌尿器科に紹介受診となった.膀胱内に異常所見はなく,腟前壁に腫瘤を触知したことから,当科紹介受診となった.肉眼上,腟壁下部1/3の前壁に外向性に発育する35 mm大の腫瘤を認めた.病理検査結果は明細胞腺癌であり,画像検査では他臓器に原発腫瘍がなく,腟壁限局腫瘍であったことから腟原発性明細胞腺癌(FIGOI期)と診断した.腫瘍の伸展範囲より治療は手術が可能と判断し,広汎子宮全摘,腟全摘,骨盤リンパ節,鼠径リンパ節郭清術を施行した.術後後療法としてTC3コースを施行し,1年の間再発を認めていない.腟原発性明細胞腺癌の誘因に,胎内でのDES(diethylstilbestrol)暴露が報告されているが,日本では使用されておらず本症例の誘因ではない.DES非関連の腟原発性明細胞腺癌の報告は少なく,国内での報告でも治療法は施設毎で異なっている.今後症例の蓄積を通して治療法の確立が望まれる.
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