妊娠中に症状を呈する腰椎椎間板ヘルニアは1万人に1例と稀である.保存的治療により軽快することが多いが,ときに手術が必要となることがある.今回,妊娠中に手術を施行した症例を経験したので報告する.
患者は32歳,1経妊1経産.31歳時,腰痛に対して牽引治療歴あり.妊娠21週に右腰痛と右足の跛行が出現し,その後増悪して疼痛管理が困難となったため,妊娠29週に当院転院となった.右L5/S1の腰椎椎間板ヘルニアと診断された.運動麻痺・膀胱直腸障害は認めなかった.保存的治療が奏功せず手術適応と判断した.文献検索の結果,妊娠中の腹臥位,全身麻酔下の手術は安全に施行されていた.妊娠31週3日,腹臥位,全身麻酔下に腰椎後方椎間板ヘルニア摘出術を施行した.手術は四点支持での手術台を使用し,腹部は弾性包帯で支持し,母児ともに安全に施行できた.術後16日目(33週5日)に杖歩行にて退院し,妊娠39週5日に3,052 gの児を経腟分娩した.術後半年の時点で右足底の触覚・痛覚障害が軽度残存している.
妊娠中に,腹臥位で全身麻酔下に腰椎椎間板ヘルニア手術を合併症なく行うことができた.術後,症状は軽快し,正常分娩となった.
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