【目的】産科ガイドライン2011にて妊娠28週での抗D免疫グロブリン投与が推奨されて以降妊娠中の予防的投与が広く行われているが,予防投与後のクームス陽性の持続期間に関して本邦での報告は20年以上なされていない.妊娠中の予防的投与により母体および新生児のクームス検査に影響を与える期間を検討した.
【対象と方法】2007年10月からの7年間に,当科で管理したRh陰性妊娠37例を対象とした.投与週数,母体血中の間接クームスの変化と新生児血中の直接クームスを後方視的に検討した.
【結果】搬送症例や投与希望がなかった症例などを除外し,実際に間接クームス陰性を確認した後抗D免疫グロブリンを投与した症例は22例であった.22例中投与後の間接クームスの測定を19例で行い,10例で陽性であった.うち4例は間接クームスの陰転化を確認,6例は陰性化の確認ができないまま分娩となった.間接クームス陽性例では最大で32倍の抗体価が認められた.また,妊娠36週でも最大4倍の抗体価が認められた.新生児の直接クームスは2例で陽性であり,1例は母体の間接クームスが陽性,もう1例は母体の間接クームスが陰性になった後の分娩であった.間接クームス陽性となった母体は最終的には陰性化しており,感作は否定された.
【考察】妊娠28週頃に投与した抗D免疫グロブリンは母体血中に2か月以上の長期間にわたり残存し,母体が間接クームス陰性でも新生児の直接クームスで検出されることが判明した.新生児の直接クームスが陽性というだけでは感作が成立したという証明にはならず,分娩後の抗D免疫グロブリンの投与が必要だと考えられた.母体への感作については,投与後の間接クームスの持続的な上昇を観察する必要があると考えられた.
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