晩婚化と高齢不妊症患者の増加に伴い,海外で卵子提供を受けた妊婦が増加している.しかし,その特有なリスクや合併症について認識が乏しいのが現状である.症例は44歳,未経妊.38歳より不妊治療を開始したが妊娠に至らず,米国で卵子提供を受け,体外受精-胚移植後に2絨毛膜性2羊膜性双胎妊娠が成立した.妊娠30週に頻回の子宮収縮を認め,切迫早産の診断で入院となった.妊娠32週に血圧上昇および蛋白尿を認め,重症妊娠高血圧腎症と診断し降圧治療を開始したが妊娠33週に肺水腫に至り,緊急帝王切開術を施行した.第1子は男児,体重1,707 g,Apgar score 1分値6点/5分値8点,臍帯動脈血pH 7.268,第2子は男児,体重1,974 g,Apgar score 1分値7点/5分値9点,臍帯動脈血pH 7.267でともにNICU管理となった.術直後,弛緩出血による産科的DICを呈したが,子宮収縮促進剤と輸血により全身状態は安定した.卵子提供後妊娠においては,妊娠高血圧症候群発症のリスクが高いと報告されている.本症例においても高齢・双胎妊娠というリスクに加え,重症妊娠高血圧腎症・弛緩出血を発症した.将来的には晩婚化に伴う卵子提供後妊娠のさらなる増加が予想され,データを蓄積し万全の対策を講じておく必要がある.
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