症例は72歳,2経妊2経産.腹部膨満感を主訴に近医内科を受診し,下腹部の巨大腫瘤を指摘され当科紹介受診となった.220×100 mm大の多房性囊胞性腫瘍を認め,卵巣癌の疑いにて開腹術を施行した.左卵巣の術中迅速組織診で腺癌と診断され,卵巣癌根治術を施行した.術後3日目から食事を開始したところドレーンから多量の乳白色の排液を認め,乳糜漏と診断した.食事療法を行い,術後42日目に退院となった.明細胞腺癌stage I C3の診断でdose dense TC療法を3クール施行したが,腹水貯留は持続しており,乳糜腹水の治療目的に術後5か月目に入院となった.リンパ管シンチでの漏出部位同定は困難であり,酢酸オクトレオチド皮下投与と経腸栄養剤(エレンタールⓇ)による食事療法を行った.徐々に腹水は軽減し,エゼチミブ内服に変更し52日目に退院となり,以後腹水は消失し再貯留を認めることなく経過している.
乳糜腹水は比較的稀な術後合併症ではあるが,低栄養や免疫低下を招き,治療は長期化する可能性があるため,早期の適切な治療が望ましい.本症例では長期の治療期間を要したが,食事療法と酢酸オクトレオチド・エゼチミブの併用で乳糜腹水の改善を認めた.エゼチミブを導入し退院後に治癒した難治性乳糜腹水の1例を経験したので,文献的考察を加え報告する.
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