帝王切開瘢痕部妊娠は,異所性妊娠の中でも稀であり,放置した場合,瘢痕部破裂・大量出血等,子宮全摘を余儀なくされる疾患である.今回,MTX投与により,保存的に治療し得た症例を経験したので報告する.症例は28歳女性,3経妊3経産(全て帝王切開).妊娠検査薬陽性にて妊娠6週0日に前医を受診した.経腟超音波で子宮内に胎囊を確認できず,妊娠7週0日,異所性妊娠疑いにて当院紹介受診となった.初診時,血中hCG 7,787.0 mIU/ml,経腟超音波にて帝王切開瘢痕部に一致した位置に胎囊を認めた.骨盤造影CTを施行したところ,子宮頸部前壁に低吸収結節を認め,帝王切開瘢痕部妊娠として矛盾しない所見であった.妊娠7週3日,血中hCG 9,953.0 mIU/mlと上昇し,経腟超音波にて瘢痕部の胎囊は増大し卵黄囊も認めたため,メトトレキサート(MTX)50 mgを筋注し,経過観察目的に同日入院となった.妊娠8週0日,血中hCG 10,215.0 mIU/mlと上昇し,経腟超音波では子宮内の血液貯留と腹腔内出血も増量した.妊娠8週3日には血中hCG 8,773.0 mIU/mlと下降したが依然高値であったため,MTX50 mg筋注し退院となった.血中hCGはMTX投与後12週で陰性化し,その4週後より月経が再開した.MTX単回投与での治療完結例はまれであるが,今回,MTX単回投与により保存的に治療し得た,帝王切開瘢痕部妊娠の症例を経験したので報告する.
〒102-0083
東京都千代田区麹町4-7
麹町パークサイドビル402
(株)MAコンベンションコンサルティング内
E-mail:kantorengo@jsog-k.jp