今回我々は,多発子宮筋腫を伴う子宮脱に対して全腹腔鏡下子宮全摘出術(total laparoscopic hysterectomy:TLH)と全腟閉鎖術を施行した際,偶発的に両側重複腎盂尿管を認めた症例を経験した.重複する尿管を子宮動脈と誤認する危険性があり,注意を要したので報告する.
症例は81歳,2経妊2経産.多発子宮筋腫を合併した完全子宮脱に対し,TLH,全腟閉鎖術,肛門挙筋縫縮術を同時に施行した.TLH時,尿管の走行を確認した際,蠕動運動する尿管の外側方に併走する管状構造を認めた.子宮動脈の同定・分離のために周囲を剝離すると,先の管状構造に蠕動を認め,重複尿管と診断した.2本の尿管の腹側に拍動する子宮動脈を認め,これを凝固しTLHを施行した.手術時間296分,出血量70 ml.術後造影CT検査では両側完全重複腎盂尿管の所見であり,異所開口や腎尿路奇形は認めなかった.
後方アプローチで尿管の同定と子宮動脈の剝離を行う際,子宮動脈は尿管と併走するように見えることが多い.重複尿管は本症例のように偶発的に見つかることも多いため,尿管損傷を防ぐ為に普段より尿管を同定する習慣をつけることが大切である.
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