症例は26歳(0回経妊)で,22歳時に両側卵巣腫瘍(成熟囊胞性奇形腫)の診断で両側卵巣腫瘍摘出術が行われている.以降定期健診を行っていたが,26歳時に超音波・MRIで充実性卵巣腫瘍を認め,腫瘍マーカー(AFP)も高値を示した.卵巣悪性胚細胞腫瘍の診断で開腹術を施行し,右卵巣に径8 cmの充実性腫瘍を認めた.右付属器切除を行い,卵巣悪性胚細胞腫瘍 IA期,卵黄囊腫瘍との診断に至った.
術後14日目より術後3か月までBEP療法を4コース施行し,1コース目終了後より無月経となっていた.第2度無月経の診断でカウフマン療法を2コース実施後経過観察し,化学療法終了10か月後には月経発来を認めたものの,無排卵周期が継続していた.この頃測定した血中anti-Mullerian hormone(以下AMH)濃度は検出感度以下であった.手術から約1年後に結婚し,クロミフェン 50 mg内服を開始した.クロミフェン2コース終了後の休薬期間中に妊娠成立し,その後の経過に問題なく正常分娩に至った.経過中には卵黄囊腫瘍の再発を認めなかった.
2度の手術既往と化学療法後の無月経,及び血中AMH濃度の低下から卵巣機能の低下が懸念されたが,内分泌療法により妊娠・分娩が可能である事を示唆した1例であった.
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