手術を安全に行うために解剖学的知識に基づいた安全な手術手技を行うことが重要である.特に鏡視下手術では,拡大視野のために周辺臓器の位置関係を把握しづらく,パワーソースによる他臓器損傷などに注意が必要である.このため,拡大視野での解剖学的知識を習得することは重要である.今回,新たな剖出方法によって骨盤内臓器と神経や血管走行との関係を立体的に描出可能な解剖教育ツールを作成し,鏡視下手術教育に役立てることを目的とした.倫理委員会承認のもと,医学教育に対する同意を得た固定遺体を用いて,腹壁より背側へむかって順番に膜構造の剖出を行い,定点カメラを用いて段階的に撮影を行った.18枚の撮影データを元に3D画像で再構築し,タブレット型コンピューター上で操作できるアプリケーション「レイヤー解剖」を開発した.このアプリケーション内操作によって,任意の部位への移動や視野の回転・拡大が可能で,骨盤内の臓器や血管と神経の走行が立体的かつ詳細に描出された.特に内腸骨血管と仙骨神経が非常に近接していることが理解でき,安全な手術手技につながる情報を得ることができた.このアプリケーションを活用すると,ある構造の背側に存在する血管や神経など,従来の紙媒体の解剖教科書ではイメージしづらかった血管と神経の相互位置関係の理解が容易になると期待できる.安全な鏡視下手術を行う上で,臨床解剖を効率的に学べる有用な解剖教育ツールと考えられた.
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