子宮広間膜内発育した卵巣腫瘍は後腹膜側で膀胱筋層と癒着することがある.この点を認識していたにもかかわらず,子宮広間膜内発育した卵巣腫瘍に対する腹腔鏡下付属器摘出術の際に膀胱損傷をおこした症例を経験した.症例は44歳,左子宮広間膜内に発育した直径約12 cmの卵巣腫瘍が認められた.腫瘍は子宮広間膜内で膀胱筋層と直接接しており,癒着が強固で剝離が困難であった.腫瘍と膀胱を鈍的に剝離している時に膀胱より出血し,止血操作中に膀胱損傷を起こした.腹腔鏡下付属器摘出術では,視野確保のために腫瘍内容を吸引せざるをえず膀胱と腫瘍の剝離層の同定がむずかしくなること,そうなると腫瘍と膀胱を鈍的に剝離せざるを得ないことなどから膀胱損傷のリスクが開腹手術以上に高くなる可能性がある.子宮広間膜内に発育した卵巣腫瘍に対する腹腔鏡下付属器摘出術では膀胱損傷に注意すべきである.
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