(緒言)卵巣成熟囊胞性奇形腫(以下MCT)に悪性転化を伴う頻度は1 %程度とされるが,発生する組織型の多くは扁平上皮癌で腺癌は少なく,その中でも腸型腺癌は稀である.今回MCTに腸型腺癌が発生した症例を経験したので報告する.(症例)患者は59歳4経妊2経産,癌検診のため近医を受診し,ダグラス窩に12 cm大の腫瘍を指摘された.外科での精査でMCTが疑われ当科紹介受診となった.骨盤部MRIで長径12 cmの二胞性でhair ballを伴う腫瘍を認め,明らかな悪性所見はなく,MCTを疑った.腹式単純子宮全摘出術+両側付属器摘出術の病理組織診でAdenocarcinoma(intestinal type)arising within mature cystic teratoma of the ovaryとの結果であり,後日骨盤・傍大動脈リンパ節郭清術と大網部分切除術を追加した.追加手術検体には転移,播種を認めず,最終病理組織診はFIGO IA期,pT1aN0M0であった.初回手術前にCEAが7.6 ng/mlであったが,追加手術前に3.5 ng/mlまで低下し,2年半再発所見なく経過している.(結語)MCTが悪性転化し腸型腺癌が発生した症例を経験した.腺癌への悪性転化が疑われる症例の特徴には扁平上皮癌に比べて若年であること(多くは50歳未満),CEAが高値であることなどが挙げられる.
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