発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)は赤血球が補体制御因子を欠くため,補体活性化による慢性的な溶血から貧血や血栓症を呈する疾患である.PNHの頻度は少なく合併妊娠・分娩例は稀である.合併妊娠例では妊娠中・産褥期に血栓症や貧血などを認めることがある.eculizumabを使用し妊娠中・産褥期に貧血や血栓症なく生児を得た症例を経験した.患者は32歳,1経妊1経産で28歳時にPNHと診断され,溶血性貧血のため年1回程度の輸血を要したが,慢性腎不全は認めなかった.自然妊娠により妊娠成立し,妊娠26週よりeculizumabを投与開始した.妊娠経過中は順調であった.eculizumabが2週毎の投与であり,投与直後に分娩とするために37週6日で計画分娩とした.入院時のエコーでは下肢静脈血栓はなく,分娩誘発を行い38週0日で2,812 g男児を経腟分娩した.Apgar Score 9~10で児に問題は認めなかった.分娩時出血は524 mlであった.分娩後エノキサパリンナトリウムを投与し,産褥1日目からワルファリンカリウム4 g/日の内服を開始した.産褥1日目にD-dimer 33.3と上昇を認めたが,造影CTで血栓はなく同4日目に退院となった.PNH合併妊娠にeculizumabを投与し妊娠中・産褥期にPNH増悪による貧血や血栓症なく生児を得た.PNH合併妊娠の管理にeculizumabは有用であった.
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