緩徐進行1型糖尿病(slowly progressive insulin-dependent(type1)diabetes mellitus:SPIDDM)は,徐々にインスリン分泌能の低下を来す1型糖尿病のサブタイプの一つである.早期にインスリンによる介入を行うことで,その進展を抑制し得ることが報告されている.今回我々は,妊娠を契機にSPIDDMと診断し,早期にインスリン療法を開始した一例を経験した.症例は23歳,1経妊0経産.BMI 20.1.実父,祖母に2型糖尿病の家族歴があった.近医でHbA1c 7.5%のため,overt diabetes in pregnancyの診断で妊娠18週に当院に紹介された.抗グルタミン酸脱炭酸酵素抗体(抗GAD抗体)陽性であり,内因性のインスリン分泌能は保たれていたことからSPIDDMと診断した.インスリン強化療法を開始し,良好な血糖コントロールを得た.以後の妊娠経過,および血糖コントロールは良好であった.妊娠38週に分娩誘発し,2,890 gの女児を経腟分娩した.産後はインスリン投与を継続し,当院に通院中である.若年女性の潜在的な糖代謝異常は,本症例のように妊娠を契機に診断されることがある.特にovert diabetes in pregnancyと診断した際には,膵島関連自己抗体を測定し,SPIDDMと2型糖尿病を鑑別することが重要である.
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