【緒言】術前に診断困難であった異時性に子宮筋層にびまん性転移をした直腸癌の一例を経験した.
【症例】73歳.2年前に直腸癌Stage II期に対し,前医で手術を施行した.腫瘍マーカーの上昇,造影CTで子宮体部に造影効果を認め,大腸内視鏡検査で異常なく子宮体癌疑いで紹介された.初診時,子宮は鵞卵大,子宮内膜不明瞭であった.内膜細胞診陽性,腫瘍マーカーはCEA 11.9 ng/ml,CA19-9 164.2 U/mlであった.MRIで子宮は軽度腫大し,拡散強調像高信号,造影T1強調脂肪抑制像で不均一な増強効果を認めた.子宮内膜全面掻爬術で類内膜腺癌G2であり,子宮体癌IA期相当で手術を予定した.術中所見は10 cm大の子宮が子宮底部から後壁まで結腸と癒着していたものの,結腸表面に明らかな腫瘍病変は認めなかった.腸間膜に約3 cmの播種を多数認めた.術中多量出血のため腟上部切断術+両側付属器切除術+人工肛門造設術を施行した.病理学的にHE染色では,子宮内膜に腺癌成分は確認できず,子宮全体に腺筋症様の分布で腺癌がびまん性に浸潤していた.免疫染色でCK7陰性,CK20陽性であり,直腸癌の再発,子宮転移,腹膜播種と診断した.
【結語】大腸癌が子宮へびまん性に転移する例もあるため,癌既往の患者では転移・再発の検索を行うことが肝要と考えられた.
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