脊髄損傷合併妊娠では,流早産や尿路感染症など多くの合併症が生じ得る.特に分娩管理においては,陣痛や膀胱充満などの刺激に起因する自律神経過反射が問題となり,その予防が重要とされている.今回我々は硬膜外麻酔を併用した経腟分娩の方針とし,安全に管理し得た脊髄損傷合併妊娠の一例を経験したため報告する.症例は36歳,0経妊0経産.3歳時に転落事故により受傷した.自然妊娠し近医で妊婦健診を受けていたが,脊髄損傷部位診断の結果,第3~4胸髄レベルの損傷が疑われたため,自律神経過反射の可能性を考慮し,妊娠34週6日に当院へ紹介となった.硬膜外麻酔を併用した計画分娩の方針としていたが,管理入院予定前日の妊娠36週6日に前期破水を来たしたため緊急入院となった.しかし,事前に状態を評価し分娩管理方法及び麻酔方法について方針決定をしていたため,実際には予定通りの方法で分娩管理し得た.第10~11胸椎間隙及び第3~4腰椎間隙から硬膜外カテーテルを留置して,硬膜外麻酔を併用した経腟分娩とし,明らかな自律神経過反射の発症を認めなかった.分娩後はソーシャルワーカーの介入,近医助産師外来受診の手配,保健師訪問の体制を整えてから退院とした.脊損合併妊娠は医学的にも社会的にもハイリスクな妊娠であり,分娩前の状態把握,それに基づいた分娩管理,産後の育児支援など,他科及び多職種との連携により総合的に管理していく必要がある.
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