子宮内バルーンはPPH(postpartum hemorrhage)に対する効果的かつ非侵襲的な治療方法として知られ,本邦においてもBakriバルーンが2013年に保険収載されている.今回Bakriバルーンによる急性腎障害を来した症例を経験した.患者は31歳4経妊3経産,前2回帝王切開既往であった.近医で妊娠診断後,胎盤が既往帝王切開創部にあり癒着胎盤を疑われ当院に紹介受診した.妊娠35週6日に予定帝王切開術を施行,児娩出に引き続き胎盤は容易に剝離できたが,胎盤付着部の子宮筋層の菲薄化は顕著であった.手術から帰室後15分で弛緩出血を認めBakriバルーンを留置したが,その後無尿となり,Cre 1.48 mg/dL,K 6.7 mEq/lとなった.Bakriバルーンの再挿入とバルーン内容液減量したが無尿は改善しなかった.超音波検査で両側腎盂の拡張を認め,尿管ステントを留置したところ尿量が確保でき,その後腎機能改善を認め,Bakriバルーンによる急性腎障害と診断した.尿管ステント挿入時の膀胱鏡で膀胱内に圧迫所見を認め,Bakriバルーンが物理的に膀胱・尿管・尿管口を圧迫し腎後性腎不全を誘発したと考えた.Bakriバルーン留置中の急性腎障害の際には腎後性腎不全も鑑別する必要がある.
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