子宮内避妊リング(Intrauterine device:IUD)の長期挿入後のMRI画像では拡散制限を伴うことから婦人科悪性疾患との鑑別が難しいことがある.今回我々は,当初婦人科悪性疾患が疑われたが,手術による病理診断でIUD長期挿入による炎症性疾患であった症例を経験したので報告する.
症例は64歳,3経妊3経産.30年前にIUDが挿入されたが,その後1度も交換していない.半年前より不正性器出血が認められ,当院受診となった.MRIではT1で低信号,T2で高信号を呈した2×1.5 cm大の腫瘤が子宮体部に認められ,拡散強調画像にて拡散制限が認められたことから,子宮体部悪性疾患が鑑別疾患に挙げられた.そこで,診断ならびに治療目的で拡大子宮全摘出術および両側付属器切除術が施行された.術中迅速病理検査にて,炎症性肉芽様組織が認められ,明らかな悪性所見が認められなかったため,リンパ節郭清等は行わず手術を終了した.病理学的には,子宮内膜を主体に単核球及び多核白血球が浸潤し,好酸球も散在していた.また,一部に充実性の肉芽形成がみられ,筋層に炎症が及んでいた.以上の所見から婦人科悪性疾患は否定的でありIUD長期挿入による炎症性肉芽と診断した.
IUDが長期挿入されていた炎症性疾患では,MRI画像上,特に拡散強調画像で婦人科悪性疾患が疑われることがあり十分に注意する必要性があると考えられた.
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