近年,悪性腫瘍に対する集学的治療の進歩に伴い,多くの患者が「がん」を克服するようになってきている.若年がんサバイバーが増える一方で,妊孕性喪失は若年女性がん患者にとって深刻な問題である.そのため,性腺機能低下をもたらす可能性のある治療を行う前に,治療後の妊孕性低下などのリスクに関する情報提供を行う重要性が認識されつつある.配偶子凍結保存は,妊孕性温存療法の中心的手法であり,卵子凍結,受精卵(胚)凍結,卵巣組織凍結保存から選択される.
受精卵凍結は生殖補助医療において安全性がすでに確立しており,妊娠率も高く,既婚者に対する妊孕性温存療法として第一選択となる技術である.卵子凍結は,小児・思春期ならびに若年女性にとって利点が多い妊孕性温存療法である.凍結法の改善により成績は飛躍的に向上してきている.卵巣組織凍結保存は,片側卵巣を摘出し,卵巣皮質のみを断片化し凍結保存する方法である.小児患者や時間的猶予のない患者に対しては最良の選択肢と考えられるが,組織移植の際にがん細胞移植の危険性があるため慎重に適応を考慮する必要がある.
当施設でのがん・生殖医療外来にはこれまでに519名の女性が受診し,妊孕性温存療法を施行したのは158名である.これまでに卵巣組織凍結後に融解移植した症例は3名であり,同所性,異所性併用術式により卵巣組織移植を行い,体外受精にて不妊治療中である.
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