良性卵巣腫瘍に対し腹腔鏡下手術は一般的な治療であるが,術前から腫瘍の良悪性を正確に評価することは困難であり術後に境界悪性・悪性の診断となることも少なくない.また,良性腫瘍を想定した腹腔鏡下手術では術中迅速病理診断について明確な方針もない.腹腔鏡下手術後に境界悪性・悪性と診断された2例を経験したので同時期の卵巣腫瘍症例の腫瘍評価・術中迅速病理診断につき検討した.付属器腫瘍に対し手術を行った全196例中,境界悪性・悪性腫瘍は42例(開腹40例,腹腔鏡2例),良性腫瘍は154例(開腹53例,腹腔鏡101例)であった.RMI(Risk of Malignancy Index)を用いると,境界悪性・悪性42例中17例でRMI>200,良性154例中148例でRMI≤200となりRMIの境界悪性・悪性腫瘍に対する感度・特異度は40.4%,96.1%であった.境界悪性・悪性でRMI≤200であった25例中15例(60%)が境界悪性腫瘍であり,境界悪性腫瘍におけるRMIの有用性低下が示唆された.術中迅速病理診断は151例(開腹91例,腹腔鏡60例)で行われ術中迅速病理診断と術後病理診断が一致したものは142例(94%)であった.最終病理診断と乖離した9例中7例で迅速病理診断が境界悪性または最終病理診断が粘液性腫瘍であり同病変の抽出が困難であることが推測された.術前の腫瘍評価・迅速病理診断共に境界悪性腫瘍・粘液性腫瘍で正確性が欠けることから,術式選択・方針決定において同腫瘍が疑われる場合にはより慎重な対応が必要と考えられた.
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