卵巣出血は頻度の高い婦人科急性腹症で,多くの場合は保存的治療が可能である.特に抗凝固療法中や出血性素因を有するといった内因性卵巣出血の場合,凝固異常の是正を含めた保存的治療が重要であるが,保存的治療に抵抗性の場合には外科的治療を選択することがある.今回,抗凝固療法中であるLoeys-Dietz症候群(Loeys-Dietz Syndrome;LDS)の思春期女性が卵巣内への出血を繰り返し,薬物療法に抵抗性であったが,卵巣囊胞性病変に対して手術療法を行うことで,出血の管理が可能となった一例を経験したので報告する.
患者は17歳女性,LDSに伴う大動脈弁置換術後のため,抗凝固療法中であった.腹痛を主訴に救急外来を受診,卵巣内の出血と大量血性腹水が疑われ,卵巣出血の診断で入院した.抗凝固療法の中止,ビタミンKの投与および輸血で軽快したが,9か月後に卵巣出血で再入院し保存的に管理した.退院後,偽閉経療法などの薬物療法にも反応せず,卵巣内への出血が増加し,腫瘤径が20 cm超まで増大したため,腹腔鏡補助下に左卵巣囊胞摘出術を行った.術後1年半経過した現在まで,卵巣内への出血は認めていない.内因性卵巣出血や卵巣機能保持が重要な思春期女性では,保存的治療が優先されるが,保存的治療に抵抗性の場合は,診断・治療目的に行う手術療法の適否を個別に検討する必要があると考えられた.
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