背景:膀胱損傷,膀胱子宮瘻は帝王切開術の重大な合併症である.TOLAC(trial of labor after cesarean section)不成功や分娩第2期での緊急帝王切開術の際は膀胱損傷のリスクが上昇するという報告がある.
症例:31歳の1回帝王切開術の既往のある妊婦にTOLAC不成功のため分娩第2期で緊急帝王切開術を施行した.帝王切開術中に膀胱損傷に気づかずに手術は終了した.術後2日目に腟への尿漏出を認め,膀胱腟瘻との診断で保存的管理を行った.しかし,1か月の経過でも改善が見られず精査で膀胱子宮頸管瘻の診断となった.本人の希望を考慮し,尿道カテーテル留置による保存的治療を継続したが,尿漏出は改善せず,術後5か月で膀胱子宮瘻閉鎖術を行い完治した.
結語:TOLAC不成功と分娩第2期での帝王切開術という膀胱損傷の2つのリスクファクターのある症例においては,通常以上に術中膀胱損傷に注意し,術後経過にも細心の注意を払う必要を再認識した.
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