粘液性境界悪性腫瘍は,腫瘍内に良性から悪性の領域が混在するため,卵巣上皮性境界悪性腫瘍の中でも特に診断が困難なことが多い.今回,粘液性腺腫の診断であったが,腫瘍摘出3回施行後も再発増大を繰り返し,最終的に粘液性境界悪性腫瘍と診断した症例を経験した.
症例は40歳1経妊0経産,X年5月に両側卵巣腫瘍に対し腹腔鏡下両側卵巣腫瘍摘出術を施行した.右は皮様囊腫,左は粘液性腺腫と診断された.X+1年7月に妊娠し,妊娠17週に10 cm大の卵巣腫瘍を認めた.妊娠19週で開腹左付属器摘出術を試みるも,癒着により腫瘍部分切除術となった.妊娠中に再度増大し,X+2年2月(妊娠37週1日)に,選択的帝王切開術,左付属器摘出術の方針とした.著しい癒着があり手術を完遂するには腸管や子宮の合併切除が不可避と判断し,再度腫瘍部分切除となった.本腫瘍は,いずれも粘液性腺腫の診断だったが,術後4か月で14 cmに増大した.セカンドオピニオンでは粘液性境界悪性腫瘍の診断であり,臨床経過を踏まえ病理診断を再検討し,境界悪性腫瘍と診断した.X+2年8月に根治術を施行し,以降は再発なく経過している.
本症例は,付属器摘出術を完遂できなかったことも一因であるが,粘液性腺腫で再発・増大が著しい場合は,病理学的に境界悪性腫瘍と鑑別に難渋することを踏まえ,診断・治療方針を再検討することが望ましい.
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