好酸球性胃腸炎(Eosinophilic Gastroenteritis:EGE)は,消化管に著明な好酸球浸潤を来たす希少な消化器疾患である.嚥下障害,腹痛,下痢など多彩な消化器症状を生じ,有病率は10万人に数名とされる.難治性の骨盤内炎症性疾患(Pelvic Inflammatory Disease:PID)を呈したEGEの1例を報告する.症例は45歳,2妊2産,アレルギーなし.39℃の発熱および下腹痛を主訴に来院した.子宮及び左付属器に著明な圧痛があり,また成熟囊胞性奇形腫を疑う左卵巣腫瘍を認めた.PIDを疑い抗菌薬投与を開始したものの発熱と炎症所見は改善しなかったため,左付属器および右卵管を摘出したが,術後経過は軽快と再燃を繰り返した.病理所見を再評価したところ,洗浄腹水および付属器漿膜への好酸球浸潤が著明であることからEGEの診断に至った.副腎皮質ステロイド投与を開始し,炎症所見は軽快し退院となった.EGEの診断は消化管粘膜または腹水への好酸球浸潤の病理診断に基づくが,必ずしも容易ではない.本症例においては,病理所見の再評価が診断に重要な役割を果たした.難治性の骨盤腹膜炎に遭遇した際は,試験腹腔鏡による骨盤内検索および腹水を含めた病理学的検索が診断の一助となりうることが示唆された.
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