卵巣妊娠は異所性妊娠の約3%と非常に稀な病態である.確立されたリスク因子はないが,Intrauterine device(IUD)装着や不妊治療との関連が指摘されている.今回,リスク因子のない女性が,自然妊娠による卵巣妊娠を繰り返した症例を経験した.
症例は34歳,2経妊1経産の女性で,33歳時に右卵巣成熟囊胞奇形腫に合併した卵巣妊娠の既往がある.下腹部痛を主訴に前医を受診し,妊娠反応は陽性であったが,子宮内に胎囊を認めず,左卵巣近傍に胎囊様構造物とダグラス窩に液体貯留を認め当院へ紹介受診となった.血中hCG値は2,665 mIU/ml,超音波検査で左付属器に心拍動を伴う胎芽を認め,左卵管妊娠を疑い緊急腹腔鏡手術を施行した.術中所見としては,約200 mlの腹腔内出血と左卵巣から噴出する凝血塊を認めた.両側卵管に腫大や出血はなく,腹膜や大網にも異常所見を認めず,左卵巣妊娠として左卵巣楔状切除を施行した.病理組織検査にて卵巣実質組織と混在する妊娠絨毛を認め,左卵巣妊娠と診断した.
本症例は右卵巣自然妊娠の約1年後に左卵巣に自然妊娠を発症した卵巣妊娠再発の非常に稀な症例である.術中・病理所見から原発性卵巣妊娠と考えられた.卵巣妊娠を術前に診断することは難しいが,適時に腹腔鏡手術を施行し,正確な診断と治療により,妊孕性に配慮した保存療法が可能であった.
〒102-0083
東京都千代田区麹町4-7
麹町パークサイドビル402
(株)MAコンベンションコンサルティング内
E-mail:kantorengo@jsog-k.jp