今回,われわれは術前評価に苦慮した乳腺浸潤性小葉癌(Invasive Lobular Carcinoma:以下ILC)の子宮筋層転移の1例を経験した.症例は,71歳,浸潤性小葉癌の治療前評価のCTで子宮腫大を指摘され,当科紹介受診となった.術前の子宮腟部細胞診はSquamous cell carcinoma,子宮内膜細胞診はClass III,Atypical squamous cell,子宮腟部/子宮頸管ポリープからの組織診でSquamous cell carcinoma in situ(CIS)であった.子宮腟部CIS及び子宮筋腫の診断で腹腔鏡下子宮全摘術を施行したが,術中に子宮筋層及び子宮傍組織の硬結あり易出血性のため,術式を腹式に変更した.術後の病理組織学的検索で小型類円形核を持つN/C比の高い腫瘍細胞が子宮筋層内に散在性に浸潤し,核偏在傾向を認めるN/C比の高い腫瘍細胞が子宮内に散在しており,ILC多形型の子宮転移の診断となった.ILCは,特殊型の1つで全乳癌の3.7%と発生頻度が低く,びまん性に腹腔内臓器に転移する傾向にあるが,子宮転移は稀でその特徴より画像や細胞診での術前評価が困難である.しかし,併存する悪性腫瘍が存在する場合は,その特徴や転移形式・再発検索を十分に施行する必要性が示唆された.
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