【緒言】性器結核はまれな疾患であり,日常診療で結核を念頭において診療を行うことは少ない1).性器結核は腹腔内播種・結節を生じると,卵巣がんなどの悪性腫瘍と類似した画像所見を呈することがある.今回卵巣がんの疑いで紹介され,最終的に性器結核の診断に至った一症例を経験したので報告する.
【症例】29歳,1妊0産のミャンマー人女性.1か月前から続く下腹部痛と腹部膨満感及び微熱を主訴に近医婦人科を受診した.血清CA125が2,015.8 U/mlと上昇しており,卵巣がんの疑いで当科へ紹介となった.経腟超音波断層法では両側卵巣の腫大(右卵巣26×42 mm,左卵巣43×25 mm)を認めた.骨盤造影MRIにて,内部に不整な充実部分を認める両側卵巣腫大および腹膜肥厚,大網肥厚が認められた.胸部造影CTでは,肺粒状影,左鎖骨下から腋窩,縦隔,右肺内にリンパ節腫大を認めた.悪性疾患を疑い原発巣検索のため,胃及び大腸内視鏡を施行したが異常は認められなかった.腋窩リンパ節生検を施行したところ,類上皮細胞肉芽腫を認め,リンパ節組織の結核菌PCRが陽性であった.以上より播種性結核菌症と診断された.現在,抗結核薬4剤にて治療中である.
【結語】性器結核は結核性腹膜炎まで及ぶと卵巣,卵管が腫大することがある.そのため悪性腫瘍との鑑別を要することがある.婦人科悪性腫瘍との鑑別を要する付属器腫瘤では,結核の可能性を念頭に置いて診察を行う必要があると考えられた.
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