周産期GAS感染症の2症例を経験したため報告する.症例1:26歳2妊1産.腹痛を主訴に前医を受診し,妊娠13週切迫流産の診断で帰宅したが,腹痛が増悪し自宅で自然流産となった.前医を再受診し胎盤遺残を指摘され入院となったが,入院直後より急激にSpO2が低下し心肺停止となり,心肺蘇生を行いながら当院へ搬送,到着後心肺蘇生を継続するも死亡した.当院で施行した造影CTで肺塞栓症の所見はなく,腟分泌物からGASが検出された.症例2:37歳1妊0産.妊娠21週6日に38.0℃の発熱と関節痛が出現し,前々医でインフルエンザ感染症の疑いで処方,帰宅となった.帰宅後に腹痛・嘔吐あり,前々医へ救急搬送された.子宮内胎児死亡と診断され,まもなく自然陣痛が発来し経腟分娩となった.産後出血は非凝固性で血尿も伴い,SpO2が低下し前医へ搬送された.前医で播種性血管内凝固の診断で輸血を行うも,SpO2が改善せず当院へ搬送された.搬送中に心肺停止となり心肺蘇生を行ったが死亡した.前医での腟分泌物からGASが検出された.「劇症分娩型」GAS感染症は救命症例も報告されているが,対応する間もなく死亡に至ることも依然多い.認知度が低く鑑別診断に挙がらないことや,他の産科的緊急疾患との鑑別が難しいこと,また病態の把握が完全ではないことが適切な治療介入を遅らせる要因と思われ,死亡例も含めた症例の蓄積と分析が必要である.
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