胎胞膨隆を伴う切迫早産症例では床上安静が指示される傾向にある.床上安静は血栓症や廃用症候群などの身体的リスクの他,心理的リスクも危惧される.そこで,胎胞膨隆を伴う切迫早産症例における床上安静の有効性を検討した.
2006年6月から2017年8月に,切迫早産の診断で妊娠28週未満に当院へ母体搬送され,胎胞膨隆を認めた症例のうち,多胎妊娠と搬送時陣痛発来を除いた96症例を対象とした.内子宮口は開大するも腟鏡診で胎胞が視認できないものをtype 1,腟鏡診で胎胞が視認できるが頸管内に留まるものをtype 2,胎胞が腟内に脱出しているものをtype 3とした.2011年7月に,切迫早産管理において極力床上安静を指示しない方針に変更したため,type 1およびtype 2において,変更前後における妊娠延長期間の差の有無についてFisherの正確検定により検討した.
Type 1,type 2いずれも,床上安静群と非床上安静群で28日以内に分娩となった症例数に有意差はなかった(それぞれp=0.47,p=0.68).Type 3は全例床上安静としたが,15例中11例が1週以内に分娩となった.
腟鏡診で胎胞が視認できないか,胎胞が頸管内にとどまる場合,床上安静としないために分娩時期が早まるとは結論付けられず,床上安静は身体的・心理的リスクを増加させるデメリットの方が大きいと考えられる.
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