妊娠高血圧症候群でない妊婦が分娩時に血圧上昇を来すと,分娩時高血圧(Labor Onset Hypertension,LOH)となる.LOHの定義は先行研究で一定せず,頻度も異なる.硬膜外無痛分娩(Labor Epidural Analgesia,LEA)がLOHを減らすかどうか,調べ得た範囲では明らかでない.本研究ではLOHの頻度を調査し,LEA実施の有無でLOHの頻度が異なるか調査した.当院で2017年7月1日から12月31日までに経腟分娩を試行した妊娠37週以降,児生存,単胎妊娠602例のうち,以下を除外した.選択的帝王切開,分娩前に妊娠高血圧症候群と診断された例,インスリン使用,甲状腺疾患で内服加療,LOHを発症してからLEAを導入した例.陣痛間欠期に,収縮期血圧140 mmHg以上または拡張期血圧90 mmHg以上を2回以上認めた場合をLOHとした.周産期経過を調査し,LEA実施群と非実施群におけるLOHの頻度をそれぞれ検討した.対象475例中LOHは28例(5.9%),重症LOHは6例(1.2%)で認めた.LEAは105例(22.1%)で実施した.LEAの有無により,LOH(20例(5.4%)対8例(7.6%)),重症LOH(4例(1.1%)対2例(1.9%))の頻度に差を認めなかった.LEAはLOHを減少させない可能性が示唆された.
〒102-0083
東京都千代田区麹町4-7
麹町パークサイドビル402
(株)MAコンベンションコンサルティング内
E-mail:kantorengo@jsog-k.jp