先天性心疾患患者の妊娠,出産に関するevidenceは未だ十分とはいえないが,各疾患におけるリスク,予後,注意点および合併症が徐々に明らかにされつつある.心疾患合併妊婦の転機とNYHA分類レベルには相関関係があるといわれているが,比較的安全とされるNYHA I度でも妊娠中に心不全や不整脈をきたす可能性があることが指摘されている.そこで当院における心疾患合併妊娠症例について検討することで,周産期予後と心血管イベントとの関連を明らかにすることを目的とした.2012年1月から2017年7月の総分娩数5,411例のうち心疾患合併妊婦50人52分娩を対象とした.当院で周産期管理を行った心疾患合併妊婦をデータベースから抽出し,心疾患の種類,分娩転帰,産科合併症および新生児予後および心血管イベントについて後方視的に検討した.母体心疾患は先天性心疾患23例(心内修復術後12例,心内修復術なし11例),不整脈疾患16例,弁膜症疾患11例,その他2例(心筋炎既往1例,狭心症既往1例)に分類した.検討した症例は全例NYHA I度であり,妊娠中の心機能悪化症例はなく,周産期予後は良好であった.しかし心内修復術後の症例と不整脈疾患の症例で経過中に心疾患関連事象を認めた.NYHA I度の先天性心疾患合併妊娠患者の妊娠・分娩は比較的安全とされているが,妊娠中に合併症をきたす可能性が示唆されたため,報告する.
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