本邦では女性の社会進出や晩婚化に伴い,40歳前後で不妊治療を受ける女性が増加している.不妊治療薬の使用が浸潤卵巣癌リスクを高めることはないとされるが,原発性不妊や子宮内膜症は卵巣癌の高リスク因子である.われわれは不妊治療中に診断された上皮性卵巣・卵管癌を3例経験したので臨床病理学的特徴を検討した.3例とも未産婦で卵巣・卵管癌診断時の年齢は41歳であった.診断の契機はいずれも超音波検査での卵巣囊腫内の充実部の出現であった.症例1は内膜症性囊胞手術の既往があり,不妊治療による妊娠歴があった.術前CA125値は35 U/mLで,IC2期の明細胞癌であった.症例2は大腸癌の既往と家族歴(父,弟,叔父)があり,子宮内膜異型増殖症の既往もあった.内膜症性囊胞でフォローされており,術前CA125値は61 U/mLで,IC1期の類内膜癌・漿液性癌の混合癌であった.症例3は家族歴に卵巣癌(姉)があった.当初の画像検査では境界悪性腫瘍が疑われ,CA125は19 U/mLと正常であったが,手術時には対側卵巣と同側卵管にも病変を認め(IIB期),境界悪性を背景にした高異型度漿液性癌であった.内膜症性囊胞合併例以外でも,癌の既往や家族歴を有する症例では,40歳前後での卵巣・卵管癌の発症リスクがある.不妊治療例では治療開始時に癌の家族歴も聴取し,卵巣癌発症リスクの評価が必要であると考えられる.
〒102-0083
東京都千代田区麹町4-7
麹町パークサイドビル402
(株)MAコンベンションコンサルティング内
E-mail:kantorengo@jsog-k.jp