絨毛性疾患のうちの一つである過大着床部(Exaggerated placental site;EPS)は中間型栄養膜細胞(intermediate trophoblast;IT)が増殖する稀な疾患である.EPSと腫瘍性病変である胎盤部トロホブラスト腫瘍(Placental site trophoblastic tumor;PSTT)は共にITが増殖する病変であるため,両者の鑑別は苦慮することが多く,摘出子宮の病理学的検索を行わない限りは,診断困難なことが多い.今回我々は,子宮内容除去術後のhCG高値が遷延し,腹腔鏡下腟式子宮全摘出術によりEPSと診断した1症例を経験したので報告する.
症例は47歳1妊0産.初診時の経腟超音波所見から胞状奇胎を疑い,子宮内容除去術を施行した.子宮内容物の病理組織診断では奇胎成分を認めずEPSまたはPSTTの可能性が指摘された.子宮内容除去術後に血中hCGは上昇傾向を認め,MRI検査で子宮底部に約30 mmの腫瘤を認めた.診断加療目的に腹腔鏡下腟式子宮全摘出術を施行し,病理組織学的にEPSと診断された.EPSはITの非腫瘍性増殖であり,子宮内容除去術にて軽快する場合もあるが,EPSに対する具体的な治療方法は確立されていない.術前評価を慎重に行った上での腹腔鏡下腟式子宮全摘出術はEPSに対する診断および治療に有用である可能性がある.
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