妊婦の高齢化に伴い,子宮筋腫合併妊娠は増加している.子宮下部や頸部筋腫合併妊娠では,経腟分娩の際に児頭下降障害が起きることが懸念される.特に子宮筋腫が児頭より下方にある場合に,経腟分娩可能であることを陣痛発来前に判断するための明確な基準はなく,緊急帝王切開術への移行を懸念して選択的帝王切開術をすることがある.症例は35歳2妊1産の経産婦で,自然妊娠成立後,近医で妊娠管理をされた.子宮頸部筋腫を指摘され,妊娠29週の時点で子宮筋腫が児頭より下方にあり,妊娠33週3日に当院を紹介受診した.妊娠36週の骨盤MRIで児頭より下方にある長径6 cm大の子宮頸部筋腫を確認した.経腟分娩の希望があり,帝王切開術の準備をした上で陣痛発来を待機した.陣痛の発来なく妊娠41週3日より計4日間の分娩誘発を行うも陣痛発来しなかった.妊娠42週0日に予定帝王切開術を検討したが,自然陣痛発来し経腟分娩した.母児とも問題なく,産後経過良好であった.産後1か月での経腟超音波検査では子宮筋腫が頸部から体下部の漿膜下筋腫であることを確認した.本症例は陣痛発来前に児頭より下方に長径6 cm大の子宮筋腫を認めたが,児頭が筋腫より先進することで経腟分娩可能であった.その一因として,分娩時の筋腫の軟化が挙げられるが,児頭より下方にある子宮筋腫合併妊娠であっても,経腟分娩のトライを検討してもよいと考える.
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