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第56巻 第4号

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症例報告
Nuck管水腫は高率に子宮内膜症を合併する
中山 真恵, 百村 麻衣, 岡 愛子, 澁谷 英里子, 松本 浩範, 岩下 光利, 小林 陽一
杏林大学医学部産科婦人科学教室
関東連合産科婦人科学会誌, 56(4):567-572, 2019

 胎生期の発生過程では,子宮円靭帯の形成に随伴して腹膜鞘状突起が鼠径管内に流入し,通常であれば生後1年以内に閉鎖する.しかし閉鎖せずに遺残することで囊胞を形成し,水腫となったものをNuck管水腫と言う.Nuck管水腫は鼠径部腫瘤で発見されることが一番多く,半数以上は無痛性腫瘤である.鼠径部に発生する子宮内膜症の頻度は全子宮内膜症のうち0.4%と非常に少なく,Nuck管水腫に合併した子宮内膜症はさらに稀である.しかし当院で過去5年間に経験した成人Nuck管水腫と診断された症例を後方視的に検討した結果,9症例中6症例と高率に病理学的に子宮内膜症を認めた.自覚症状として月経に随伴する鼠径部痛や腫瘤増大を認めた症例は各1症例であった.6症例中卵巣・骨盤内子宮内膜症合併例は1症例で,血清CA125値は測定した4症例全例で正常範囲内であった.9症例全例で水腫摘出術を施行し,後療法は1症例で施行されたが,全例で再発は認めていない.鼠径部子宮内膜症の再発やNuck管水腫内に発生した悪性腫瘍の報告例もあり,慎重な経過観察が必要である.成人女性の鼠径部腫瘤でNuck管水腫を疑う際には,子宮内膜症を併存している可能性を考慮する必要がある.

Key words:The canal of Nuck hydrocel, Endometriosis, Inguinal mass
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