妊娠中に診断された乳癌(以下,妊娠期乳癌とする)の治療は進行度,組織型,ホルモン受容体・Human epidermal growth factor receptor 2遺伝子増幅/蛋白過剰発現(以下,HER2陽性)の有無だけでなく,母体の生命予後と胎児の長期予後のいずれも考慮しなければならず,妊娠週数を考慮した個別の対応が必要となる.一定のコンセンサスが得られているわけではなく,治療方法の選択に苦慮することが多い.今回妊娠中期にHER2陽性乳癌と診断し,妊娠中に手術及び化学療法,分娩後に抗HER2療法(Trastuzumab)を施行した症例を経験したので報告する.36歳2妊1産,妊娠25週にHER2陽性浸潤性左乳管癌の診断を受けた.妊娠27週に左乳房切除術を行い,AdriamycinとCyclophosphamideによる術後化学療法(以下,AC療法)を施行し,妊娠36週4日に陣痛誘発を行い,経腟分娩に至った.分娩後にAC療法を再開後,分子標的薬(Trastuzumab),放射線治療を追加し,治療後2年現在,無再発で経過観察中である.今後乳癌の増加とともに妊娠関連乳癌も増加することが予想される.関連各科が連携し,周産期分野においても症例の蓄積,検討を続けることによって,母児にとってより良い治療方針を選択することが望まれる.
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