妊娠中の腸閉塞は,稀な合併症であるが母児共に死に至ることもある重篤な疾患である.保存的治療で改善しない場合に迅速な外科的介入を要するが,それにより児の早期娩出の可能性があり適切なタイミングでの介入が重要となる.
今回,妊娠中に腸閉塞を発症し全身麻酔下癒着解除術を行い正常経腟分娩に至った一例を報告する.
症例は30歳,1妊0産.既往に2回の開腹手術歴があった.妊娠29週3日に腸閉塞を発症し,当院へ母体搬送された.来院時,画像検査から複雑性腸閉塞は否定的だったため,保存的治療を開始し,連日,経腹超音波検査,動脈血液ガス分析の乳酸値で状態を評価した.妊娠30週0日,腹部症状が増悪し,経腹超音波検査上で腸管拡張の増悪を確認したため,複雑性腸閉塞への移行を疑い,緊急開腹手術を行った.前回手術部に癒着がありこれを解除したが,腸管の血流障害は認めず腸管は切除しなかった.術前診断と同様,単純性腸閉塞の診断であった.以後順調に経過し術後25日目に前医へ転院,妊娠40週1日で正常経腟分娩に至った.
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