たこつぼ型心筋症は心尖部を中心とした一過性の左室壁運動障害で,近年,産婦人科領域を含む周術期に発症した報告が増加している.今回,手術後にたこつぼ型心筋症を発症した低異型度子宮内膜間質肉腫の1例を経験したので報告する.
症例は56歳の女性で不正性器出血と巨大な子宮腫瘤を指摘され受診した.骨盤部MRI検査で子宮は剣状突起に達し,内部に長径31 cmの出血と壊死を伴う腫瘤がみられた.子宮肉腫の疑いで子宮摘出術を行い,摘出腫瘍の病理診断は低異型度子宮内膜間質肉腫であった.術後1日目に胸部圧迫感と呼吸困難を訴えたが,心電図異常はなかった.造影CT検査で肺血栓塞栓症はなかったが,両側胸水と右肺門部に浸潤影を認め,肺炎と低アルブミン血症による肺水腫と診断した.術後2日目に呼吸困難が増悪し,胸部X線検査で両側肺門部の浸潤影の拡大がみられた.心原性肺水腫を疑い,心臓超音波および心臓カテーテル検査を行ったところ,冠動脈に狭窄はなかったが,心尖部中心の左室壁運動低下があり,たこつぼ型心筋症と診断した.気管内挿管の上,人工呼吸器管理とし,大動脈内バルーンパンピング法,ノルアドレナリンと利尿薬の投与で呼吸と循環状態は改善し,術後13日目に退院とした.
特に大きな腫瘍の摘出術後に胸部症状や呼吸困難が認められる場合には,たこつぼ型心筋症を鑑別として挙げ,早期に診断し介入が必要であると考えられた.
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