無石性胆囊炎は胆囊内に胆石を認めず,胆囊の収縮不全や虚血によって発症する胆囊壁の炎症である.本症は全身状態の重篤な患者で多く報告され,予後が不良である一方,婦人科周術期での報告は稀である.我々は婦人科手術後に無石性胆囊炎を併発した3症例を経験したため,発症に関わる因子,予後につき文献的考察を含めて報告する.症例1は右卵巣腫瘍に対して腹式単純子宮全摘術,両側付属器摘出術を行った.術後2日目に創部離開のため再手術し,その後絶飲食管理が続いた.7日目に無石性胆囊炎を発症し,抗菌薬投与により軽快した.本症例は乳がん既往につきタモキシフェンを内服していた.症例2は両側子宮内膜症性囊胞に対して腹腔鏡下に両側付属器の手術を施行した.術後5日目に胆囊炎を発症し,喘息のために内服していた平滑筋弛緩作用のあるテオフィリンを減量し,抗菌薬加療により軽快した.症例3は子宮筋腫に対して腹式子宮筋腫核出術を施行した.術後2日目より発熱,肝胆道系酵素の上昇,3日目に右季肋部痛と胆泥の貯留を認め胆囊炎と診断した.原因精査のためのCTで膵頭部腫瘍が明らかとなった.胆泥は自然排出され,症状も自然軽快した.我々の経験した無石性胆囊炎の3症例は重篤な基礎疾患のない若年患者であり,予後は良好であった.発症した際には早期対応に努め,女性での発症が稀であることを念頭にその誘因を探索し対応することが大切である.
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