鉄不足は世界的な問題であり,鉄不足の診断およびその治療は重要である.鉄は生体内で赤芽球を形成する重要な要素であり,酸素を運搬する役割を主に担っている.妊娠中は鉄の必要量が顕著に増加する.これは胎児や胎盤からの需要が高まることや,母体の循環血液量の増加に対応する必要があるためである.また,ヘルスケアの面からも,鉄欠乏の診断は非常に重要である.
当院は挙児希望の女性に対して不妊治療を行うクリニックであり,健康で子どもが欲しいと願う女性に対して医療を行う立場にある.このたび挙児希望女性の鉄欠乏の現状に関してスクリーニングする機会を得たので報告する.【方法】挙児希望の女性5,168名,35.7±4.7歳(mean±SD)(range:21~49歳)に対して血算,フェリチンを評価した.【成績】Hb 12.0 g/dL未満の貧血であった例は,全体の14.0%(726/5,168)であった.また貯蔵鉄を意味するフェリチンに関しての検討では,基準値を12 ng/mLとして解析し,これに満たない例を「鉄の貯蓄が不足している女性」とした.今回の検討では,潜在性貧血ともよばれるIDNA(iron depletion without anemia)の例(Hb 12.0 g/dL以上,フェリチンが12 ng/mL未満)が,全体の12.0%(417/3,475)と多くの割合を占めた.【結論】鉄欠乏には貧血を伴わない潜在性貧血が多くを占めるため,血算のみではなく,貯蔵鉄の評価としてフェリチンも併せて測定することを勧めたい.
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