分娩後の養育について妊娠中からの公的支援が必要と考えられる妊婦を特定妊婦に選定し,多職種が連携して支援している.精神疾患合併妊娠は特定妊婦選定の理由の1つとなりうるが,家庭環境などを考慮し非選定例も多い.本研究の目的は,精神疾患合併妊娠を特定妊婦選定の有無で分類し検討することでその背景を明らかにすることとした.対象は2018年1月から2019年8月に当院で対応した精神疾患の既往または合併のある妊婦118例(特定妊婦28例,非特定妊婦90例)であり,当院倫理委員会承認のもと母体背景,精神疾患診断名と治療状況,周産期予後について検討した.特定妊婦群では若年妊娠(p<0.05),未婚,生活保護受給者,妊娠中の内服継続,通院継続,治療の自己中断歴(各々p<0.01)が有意に多かった.特定妊婦群ではうつ病以外にパーソナリティー障害や精神発達遅滞が多く,覚醒剤使用後遺症が3例あった.周産期予後について有意差はなかった.7例が児童相談所に保護となり,いずれも特定妊婦群であった.周産期予後に差はないものの,児童相談所保護が多いことから,妊娠中から地域との連携をスムーズにするという点で特定妊婦選定の意義が再認識された.医療機関においては一般診療以外の労力が大きいことから,選定対象と具体的な対応については今後も検討が必要であると考えられた.
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