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第57巻 第4号

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症例報告
経過観察中に良性から境界悪性に転化したと考えられたBrenner腫瘍の1例
長井 友邦, 大平 哲史, 上條 恭佑, 内山 夏紀, 池田 枝里, 松原 直樹, 橘 涼太
飯田市立病院産婦人科
関東連合産科婦人科学会誌, 57(4):487-493, 2020

 Brenner腫瘍は全卵巣腫瘍の1~3%を占める比較的稀な上皮性腫瘍であるが,多くは良性であり,Brenner腫瘍の中で境界悪性と悪性は合わせて5%程度とされている.今回我々は,境界悪性Brenner腫瘍の1例を経験した.症例は74歳,2妊2産で,3年前に排尿時痛で近医泌尿器科を受診した際に径50 mmの充実性右卵巣腫瘍を指摘され当科紹介となった.画像所見から線維腫を疑い,6か月毎に経過観察を行った.腫瘍は2年8か月間は不変であったが,6か月後の再診時に径122 mmと増大しており,新たに壁在結節を伴う囊胞構造が出現していた.悪性卵巣腫瘍の出現を疑い右付属器摘出術を施行したところ,画像上以前から認められていた充実性腫瘤部分は病理組織検査では良性Brenner腫瘍であった.一方,囊胞性腫瘤部分は異型移行上皮型細胞が乳頭状~胞巣状に増生しており境界悪性Brenner腫瘍と診断した.本症例ではBrenner腫瘍が良性から境界悪性へ転化した時間的経過を捉えることができたと考えられ,この点で極めて貴重な1例と考えられた.

Key words:Brenner tumor, borderline, benign, transformation
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